自律神経を調整するリラックス法概論
緊張しすぎたり、不安を感じすぎる状態(予期不安)や仕事や人間関係から生じるストレスがもたらす緊張を解消できずに苦しんでいる人は多いと思います。そんな方が自律神経を調整をしてリラックスして、生き生きとした健康的な暮らしができたらどんなにか幸せでしょう。
ダラーッとするのでなく、上手くリラックスできるようになれば、人生はもっと良い方向に進み始めますよ。自分の本来の才能を強い緊張や不安のために生かせなかったり、心身の不調により発揮できないのはもったいないことです。
Contents
緊張をあるがままに受け入れるとは?
私自身緊張と不安で悩んできて色々な方法を試してきました。その結果このレポートに書いてある内容を実践するようになりました。薬ではなく自分自身の身体を使った一種の行のようなものです。
緊張や不安から自由になるには、不安や緊張から生じる自分のマイナスの感情も「あるがままに受け入れる」という心構えが必要です。逆説的ですがとても大事なことです。
確かにマイナスの感情はいやですが、その感情の本当の意味に気付くためには、「辛く苦しい」ことだけを問題にしていてはいけないのです。善悪・好き嫌いの判断を超えて一旦「あるがままに」受け入れます。
嫌な感情は逃げようとするほど追いかけてきます。あるがままに受け入れられるように、自律神経調整法に取り組むと、いつの間にか嫌な感情から自由になっている事が増えてきます。
現在の私は、実生活の問題にならない程度に緊張や不安を調整できるようになっています。とはいえ、緊張がなくなったわけでもありません。緊張や不安は必要なものであって無くしてはいけないものです。緊張と不安は本来の「目的を果たす」用心となる感情です。身体の痛みが身体の不調を教えてくれると同時に治癒反応でもあるのと同じことです。痛みを嫌って全く痛みを感じない身体になるとどうなるか想像してみてください。
あがり症を初めとした緊張しやすい性格を治すということは、緊張や不安を感じなくなるということではなく、不安や緊張があっても本来の目的が果たせるようになるということです。
このことに気づくには、逃げないで不安突破を積み重ねることが大事です。リラックスする技術を習得する目的を見失っては本末転倒です。リラックスすることが目的ではなく、自己実現のための手段の一つに過ぎないという事を何度も確認してもらいたいと思います。
自律訓練法と自己統制法
ドイツのシュルツ博士が1932年に体系化自律訓練法は、初めて自律神経調整法として確立されたものです。シュルツ博士はリラックス状態では手足の温度が上がり、呼吸は深く少なくなり、心臓の拍動はゆっくり打っている事実からヒントを得ました。自律神経は人の意志ではコントロールできないのが常識であったのに、このような副交感神経優位の状態を自ら作り出しリラックス状態になれるという発見は画期的なものでした。
自己統制法
ただ、ドイツ人特有のかっちりとした枠組みの中で実践する事は日本人には馴染みにくいのも事実です。特に最初の重感の段階で行き詰る人は少なくないようです。
そこで考案されたのが、九州大学に日本で初めて心療内科を創設された故池見酉二郎先生が考案された自己統制法です。自己統制法は温感から入るので自然に取り組めると評価の高い方法です。
ここに池見先生の優しい声で自己統制法の一部を音声で載せておきます。受動的注意集中という気持ちで聞いてみてください。これは催眠でも自己暗示でもありません。
参考までに自己統制法の第一段階を聞いてみてください(音声は池見酉二郎先生)
自律訓練法も自己統制法もストレスの緩和、疲労回復、仕事や勉強の能率向上、抑うつや不安の軽減に効果があり、心身症や神経症に効果があるとされています。緊張した時に「心」に働きかけるのではなく「体」を副交感神経優位の状態にすることによって、心身をリラックス状態にするものです。
ここではシュルツ博士の自律訓練法ではなく、それよりも更に深いリラックスや内省を得ることができる方法を使っています。
また、このような自律神経の調整はシュルツ博士が体系化した自律訓練法を考案する前から、東洋でも座禅や静坐法などでも同じような副交感神経優位の状態になっていたのです。
自律神経を調整する3つの方法
このサイトで取り上げる3つの方法は私独自で一から考えたものではありません。3つは段階的にすすめられるものです。いずれか一つの実践も十分に機能するものです。
1.腹式呼吸法 | 呼吸により自律神経を調整 | → https://fbmc7.biz/?p=1354 |
2.筋肉の緊張をゆるめる法 | 緊張した筋肉をゆるめることで自律神経を調整 | → https://fbmc7.biz/?p=1372 |
3.自律神経を整える法 | 手足が暖かいという温感を出すことで自律神経を調整する | ○ 自己統制法で手足の温感のイメージ訓練~姿勢と心構え~ ○ 自律訓練法や自己統制法のコツと補助的方法 ○ 自己統制法を応用した温感イメージ訓練の実際 |
3つの方法はそれぞれがストレス解消法、健康法として充分な機能を持っています。やり方は夫々違うので、3つの方法を併せて実行すると、相乗効果が期待できます。それぞれの方法に取り組んで要領をつかんでください。
効果が出るまでには少し時間が必要です。
ただ効果が出るのには何事も多少の時間が必要となります。巷にある「たった3日で5日で驚くほどの効果」「あるいは音声を聞くだけで治る」などという方法はまずニセモノです。たった一日で効果の出る方法など存在しないのです。
1週間で効果を実感できる方も沢山いますので、3週間あれば95%の人には効果が現れていることでしょう。5%の方にはもう少し時間がかかるかもしれません。いずれにしても焦りは禁物というより禁止です。
特に3.の自律神経を整える法については焦りは逆効果をもたらすので、自然に効果が現れるのを待ってください。
向こうから効果がやってくるのをゆったりと待つという気持ちが大事です。訓練をしているときだけ、まじめに取り組んだら後は次の訓練まで忘れてください。まじめな人ほど寝てもさめても少しでも早く効果を出したいと焦ってしまい、結局上手くいかないという傾向が無きにしも非ずです。気をつけてくださいね。4週間程度は焦らずにやりましょう。
人間の心の緊張とリラックスに関係の深い自律神経
自律神経調整とりラックスについて知っておいて欲しいのはストレスは自律神経のバランスを狂わせますが、意志によってコントロールできないところに難しさがあります。
自律神経は人間の感情と深く結びついています。例えば緊張した時には、心臓の拍動は速くなり、呼吸は浅く多く、手のひらや脇に汗を書きます。この時には自律神経の交感神経が優位(強く)に働いている状態です。
自分自身をコントロールするときに、私たちは家庭や学校で「道徳的」「倫理的」に自分の意志で「~すべき」ということを学んできました。しかし自分の意志で自律神経や嫌な感情をコントロールできないことも痛いほど知っています。
心を落ち着かせるには体に働きかけるのが近道
直接心に働きかけて、「落ちつけ落ちつけ」と言い聞かせても、心はなかなか落ちつくものではありません。「気持ちを強く持て」「そんな小さなことでクヨクヨするな」と励まされても、逆にますます緊張や不安が強くなることさえ良くあります。
「心の緊張」は実は「体の筋肉」が緊張している状態で生じてくるものなのです。しかし、私たちは普段自分自身の体の感覚に耳を澄ませていません。肩や腰が痛いとか肩が凝ったというような、普段とは違う胃の痛みが出た時に初めて体の感覚に気づきます。
それに加えて「体の使い方」が悪いために、慢性的な「筋肉の緊張」が起こっているのにも全く気づかない事があります。むしろ仕事では「筋肉を緊張」させているほうが仕事をしている気がするから、ますますリラックスの方法を習得するチャンスに出会いません。
体から無駄な緊張を抜くから体は本来の能力を発揮できます。私たちも日常、筋肉を無駄に緊張させていることに気づく必要があります。体の緊張に気づかなければ体の緊張を解消することはできません。
体の緊張を解消できなければ、心の緊張や不安を解消することはできません。このことに気づかずいくら緊張や不安をどうにかしようとしても有効は解消法は身につきません。精神的なストレスは身体からアプローチするのが王道だと思います。
ここでの自律神経調整リラックス法は3つのエクササイズから構成されます。筋肉の緊張を解消する2つの方法と呼吸法です。
1.腹式呼吸
2.ヤコブソンの漸進的筋肉弛緩法
3.副交感神経調整法
まず呼吸法からエクササイズを行います。
丹田を意識した腹式呼吸法でゆっくりとした深い呼吸を行い、自律神経を調整する素地を作っていきます。最初は呼吸法も単独に学ばなければなりませんが、慣れてくれば、あと2つのエクササイズをしながら行えば良いのです。
次に筋肉の緊張を解消する2つの方法について述べていきます。
筋肉を緊張させた後、緩める~ヤコブソンの漸進的筋肉弛緩法
筋肉に力を入れた後その部位の筋肉の力が入った状態を感じてみます。その後力を抜いてその筋肉の弛緩をゆっくりと感じます。味わいます。自律訓練法に似た方法ですが、日本人では特にやりやすい方法です。体がリラックスし副交感神経が優位の時の状態を作り出すことで自律神経の調整をはかり筋肉の緊張を解消するエクササイズを行います。
この二つのエクササイズは初期のうちは実施する順番が重要となります。
まず、筋肉が緊張している状態を感じ、それから緊張が緩むことを実感するというエクササイズが先となります。このエクササイズをすすめていくと日常的に緊張している筋肉への気づきができ、筋肉の緊張の解消ができ、無駄な力は抜いて動くことができるようになります。
体の緊張を感じ取るエクササイズを先に取り入れることで、効果がより相乗的になります。この方法はジェイコブソンの筋肉の漸進的弛緩法が元となっています。
まず、腕の筋肉を緊張させたあと緩める方法をやってみる
まず、体の一部位の筋肉を実際に緊張させ、その筋肉の緊張を感じることから入っていきます。実際にやってみるとわかるのですが、例えば手首を起こすよう動作に伴ってどこの筋肉が緊張しているか案外気づかないものです。手首を起こすことで引き伸ばされている部分と間違えたりすることはよくあることです。
実際に筋肉を動かして見てもわかりにくいのですから、普段慢性的な筋肉の緊張があれば分かりづらいものです。筋肉の緊張がわかるようになると、今度は緊張を緩めて、手首を元の位置に戻します。戻すに連れて筋肉の緊張は緩んでくるので、その緩んだ感じを感じ取ります。
これを緊張の程度を徐々に少なくしても感じ取れるようにし、それを体の色々な部所で行います。
緊張と弛緩の両方を自分の意志で作り、感じ取り弛緩した感じをしっかりと味わえるようになると、筋肉の緊張をコントロールできるようになります。
自律神経は人間の意志でコントロールできない神経ですが、筋肉の緊張を解消する事に始まり、体に働きかけることで間接的にコントロールする能力が身に付きます。その結果、リラックス状態を自ら作り出せるようになるのです。
リラックスした体の状態はゆるゆるぬくぬく
ではリラックスした状態とはどのような体の状態になっているのか、自律神経との関係から考えてみましょう。
リラックスすれば、心臓はゆっくりと拍動し、呼吸は深く、呼吸回数もス来なくなってきます。手のひらは乾き、手が暖かくなってきます。簡単に表せばこれが体からみたリラックス状態で、副交感神経が優位に働いています。ちょうど眠くなった赤ちゃんのような状態だと思ってください。
リラックスは副交感神経優位の状態
心理的に緊張した時に交感神経優位な状態を副交感神経優位な状態に調整できれば、心理的にリラックスした状態に調整できるということになります。緊張した心に直接落ちつけと言い聞かせてもりラックスは難しい。
交感神経の働き | 副交感神経の働き | |
心臓 | 心拍数増加 | 心拍数減少 |
眼 | 瞳孔散大 | 瞳孔縮小 |
血管 | 収縮 | 拡張 |
呼吸 | 浅く速い | 遅く深い |
唾液腺 | サラッとした多量の唾液 | 粘りのある唾液 |
表を見るとよくわかりますが、緊張した時には交感神経が優位に働くので、心臓はドキドキと心拍数が増加し、呼吸は早く浅くなり、口の中は粘っこく喉が渇いたような状態になります。
これに比べて副交感神経優位の状態では、心臓はゆっくりと心拍を打ち、血管は広がるので手足が温かい状態となる。眠る前の赤ちゃんの手が暖かいのはリラックした副交感神経優位の状態になっているからです。
また、私たちが居眠りをしているときに思わずヨダレが垂れそうになるのは副交感神経が優位に働いているためです。
このような副交感神経優位の状態を自分で作り出せるようになることがこのレポートを書いた目的です。